CONTACT
弊社に対する業務・サービスのご発注や、マーケティング領域に関するご相談は
下記フォームに必要事項をご入力の上、ご連絡ください。
随時お返事させて頂きます。
※誠に恐れ入りますが、お問い合わせ内容次第によってはご連絡できかねる場合がございます。
マーケーターが組み立てる戦略は、大きく2つに分けることができます。
私が、P&Gの後に在籍したゲーム会社での3年間は、ちょうどスマートフォンゲームの市場拡大がピークを迎えたときでした。成長中や未成熟の市場では、多くの企業がこの②の戦略をとっていました。
80%近くの人がスマホを所有し、1日に平均3時間以上も使用している時代。スマートフォンゲーム業界は1年365日、1日24時間という中で、ひとりでも多くのユーザーに1分でも長く遊んでもらうための工夫を凝らしていたのです。
一方で、成熟したと思われる市場も、再活性化させることができます。私は成熟市場を再活性化し、その規模を拡大させたケースをいくつか体験しています。その成功体験のひとつが、P&Gの柔軟剤「レノア」です。
柔軟剤市場は、実は15年ほど前まで、徐々に縮小していました。今でこそ、多くの人が柔軟剤を使っていると思いますが、15年前は柔軟剤を使用する世帯は60%を切り、使うとしてもタオルを洗うときにしか使わないという人がほとんどで、全ての洗濯に柔軟剤を入れる世帯は20%でした。
そんな縮小しつつある市場で、P&Gの柔軟剤「バウンス」は、シェアを落としている状況でした。
なぜ柔軟剤市場は縮小しているのか、そしてP&G「バウンス」のシェアは落ち続けるのか。その理由を探るために、ユーザーへの調査をしました。
「柔軟剤は習慣で使っているけれど、ときどき使い忘れることがあっても、仕上がりにあまり違いがない気がするので、使ったり使わなかったりですね」
「柔軟剤を使っている理由は何だろう、習慣かな?」
「特に気に入っている商品はなくて、安売りしているものを買っています」
そこから見えてきたのは、消費者の「柔軟剤を使う」という行動が惰性になっていること、そして商品間の差別化も明確にできないまま、企業間で価格戦争を繰り広げているという状況でした。
P&G「バウンス」も、他商品と一緒に「うちの商品の方が、より柔らかく仕上げる」「うちの商品の方が安い」と、“better(他社製品と比べてうちの方がよい)”を必死に叫ぶことで、市場縮小に一役も二役も買いながら、シェアを落とすという悪循環に陥っていました。
当時、私はP&Gで日本の洗濯関連商品の市場・消費者戦略を任されていました。ブランド担当とR&D、営業担当で組織される洗濯関連商品マルチカテゴリーチームの一員として、日本におけるP&Gの「柔軟剤(Fabric Enhancer)」の立て直しという大きなミッションに取り組むことになったのです。
ここで注目していただきたいのが、P&Gが柔軟剤カテゴリーを「Fabric Enhancer」と呼んでいることです。「洗濯の仕上がりをよりよくする製品」と訳すのがいいかもしれません。ここから分かることは、「柔軟剤は洗濯ものを柔らかく仕上げるものである」という限定した枠で捉えず、「洗濯の仕上がりをよりよくする製品を開発して立て直す」という意味が含まれていることです。
そこで開発されたのが、防臭効果をもった柔軟剤「レノア」です。新しく防臭効果を加えることで、市場創造とシェアの奪還を目指しました。そして見事に「レノア」は発売直後から爆発的に売れて、結果的に発売後6年間で柔軟剤市場を1.8倍に拡大することに貢献しました。
市場が拡大できたのは「レノア」が、柔軟剤というカテゴリーの定義を変えることに成功し、柔軟剤を使う人や頻度を拡大できたからに他なりません。
「カテゴリーの定義を変える」と言っても“言うは易し”で、苦労の連続でした。従来品と全く違う商品にしたいが、大きく変えるとユーザーや店舗から受け入れてもらえないというジレンマがあります。かといって違いが伝わらないと、全く意味がありません。
「レノア」の開発にあたって、「従来の柔軟剤とは違うけれども、柔軟剤なんです」「柔軟剤だけれども、今までと違うんです」という微妙なバランスを保つため、商品コンセプトやパッケージを何度も繰り返してつくりました。
テレビCMのオープニングで「柔軟剤でこんなことも!?」という言葉を入れたのも、その微妙なバランスをとるための苦肉の策のひとつでした。
私たちは、知らず知らずのうちに常識や習慣、定義、王道などの様々なリミッター(枠)に囚われてしまいがちです。
習慣化して惰性的になった市場は、リミッター(枠)を壊さないと次に進めません。その枠を外してみると、無限の可能性が広がり、成熟した市場でも生まれ変わらせることができるのです。
インドには「創造の神(ブラフマー)」「維持の神(ビシュヌ)」「破壊の神(シヴァ)」の3人がいて、全てを創造・維持・破壊しては、また創造・維持・破壊するという行動を繰り返しているそうです。
ビジネスにおける市場も、そんな風に創造と破壊を繰り返して発展していくのかもしれません。
弊社に対する業務・サービスのご発注や、マーケティング領域に関するご相談は
下記フォームに必要事項をご入力の上、ご連絡ください。
随時お返事させて頂きます。
※誠に恐れ入りますが、お問い合わせ内容次第によってはご連絡できかねる場合がございます。