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RIZAP、P&G「ファブリーズ」に学ぶ、市場創造の方法

市場創造に成功したRIZAP

私は今まで消費財、ゲーム、外食産業と多種にわたる業界で仕事に取り組んできました。その中で、いくつかの「市場創造」と「市場拡大」が実現する場に居合わせてきました。

 今回は、私自身の成功体験を踏まえながら、市場の創造や拡大する事例や理由、そして、その方法論について書いていきます。

 まず市場創造や市場拡大のイメージを共有するため、最近の成功例のひとつとして「RIZAP(ライザップ)」を取り上げましょう。

 5月の決算説明会で発表された、2018年3月「ライザップ」の業績は6期連続増収で、連結売上収益が驚異的に伸び続けていることが示されました。

ライザップが、このように売り上げを伸ばしたということは、5年前まで同社について聞いたこともなかった人が、新たにお金を払い始めたということです。では、この数年でライザップにお金を払った顧客は、同社のジムに通う前は何にお金を使っていたのでしょうか。

 他のスポーツクラブやジムに通っていたが、ライザップに変えたという人は、実はそれほど多くないのではないでしょうか。それよりも、今までは飲食や嗜好品、趣味などに使っていたお金をライザップに回したという人の方が多いと思います。

ライザップは、健康志向や意識が高い人たちだけでなく、今まで運動やトレーニングにあまり関心がなかった人もターゲットにし、その人に刺さるメッセージングで運動・トレーニングを始める人口の増加に成功したのです。同社の成功は、「運動・トレーニング市場を拡大させた」と言えますし、全く新しい「コミットメントコーチング市場を創造した」とも言えると思います。

 ライザップのように、今まで「X」をしたことがない・使ったことがない人たちに、その「X」を新たに始めてもらう・使ってもらえたとき、市場は創造・拡大します。すでに「X」をしている人をターゲットとして、その人たちが現在、使用している競合商品・サービスを自社商品やサービスに変えてもらう戦略に終始すると市場が創造・拡大する可能性は限られます。

 つまり、市場の創造・拡大のためには、新たな「行動」を生み出さすことが、ひとつのカギなのです。

ファブリーズ登場で市場全体も活性化

私自身の「市場創造」の成功体験をひとつご紹介させていただきます。

 市場創造の例として、マーケティングセミナーなどでよく紹介されるP&Gの消臭芳香剤「ファブリーズ」があります。私はファブリーズを世に出す準備から、発売後2年間、売り上げを軌道に乗せるまでの戦略を立てるという経験をしました。

 ファブリーズが世の中に売り出される前は、布地のニオイが気になった場合の「行動」は、洗濯するか、我慢するか、捨てるかのどれかでした。下着や洋服など洗濯できるものは洗濯するけれど、シーツやカーテンのようにかさ張るものは頻繁に洗濯できないため、少しのニオイなら我慢する。ソファや枕など、洗濯できないモノのニオイが気になり始めたら、捨てるしかない。それは、仕方のないことで、当たり前でした。

 そこにファブリーズが登場して、「いやいや、仕方なくなんかないよ。我慢しなくてもいいし、捨てなくてもいいよ」と言って、新しい「行動」を提言したのです。

 ファブリーズは「布地のニオイをスプレーして取り除く」という、それまで全く存在しなかった「行動」を提言し、その習慣化に成功しました。そして、新しい「行動」が生み出されたことで、ファブリーズの発売から10年間に消臭芳香剤の市場は約2倍に拡大しました。

 拡大した市場の売上をファブリーズが独り占めしたわけではありません。ファブリーズの発売を機にニオイに対する消費者の意識が促進され、ニオイ対策の行動をとる人の数や頻度が増え続け、市場全体が活性化したのです。

諦めていることに市場創造のチャンスがある

先にあげたライザップの例に戻ると、同社は諦めていた人を市場に引き込むことに成功しています。「スタイルがいいとカッコイイけど、今さら自分には無理だ」「頑張ったところで、結果が出るわけない」と思っている人たちに、「ライザップが一緒に頑張って、結果をコミットするから」と、新たな行動を始めるきっかけをつくったのです。

 諦めている人に「もうこれで諦めてなくてもいいんだ」と信じてもらえる解決策として、新しい行動を提言し、それが受け入れてもらえたとき、新しい市場が生まれる。

 そう考えると、実は私たちが生きている中で、「こういうものだから、しょうがない」と諦めていることは、とてもたくさんあります。

 実は、そこに市場創造や市場拡大のチャンスが無限にある。そんな風に私は考えています。

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